
麹の力は麹菌の生産する酵素です。主なものはアミラーゼ(澱粉を分解する酵素)、プロテアーゼ(蛋白分解酵素)、リパーゼ(脂肪分解酵素)、セルラーゼ(繊維を分解する酵素)です。
菌は死んでも酵素が残れば力を発揮しますが、酵素は加熱すると効力は全く無くなります。
酵素の力は偉大で、温度湿度など条件が整えば、数分・数時間で澱粉はトロトロの糖分に、蛋白質はアミノ酸に変わります。皆さんが食事をしても数時間でお腹がすいてくるのは、この酵素が体内で働いて、デンプンやタンパク質を分解しているからです。



日本の発酵食品の数だけ種麹があるといっても過言ではないかもしれません。人間の役に立つ麹菌を探して麹を作りますが、その種を保存するのが難しいのです。
昔はいろいろの方法で保存して代々受け継いできたようですが、近年は純粋培養法が出来てからは有用菌は大切に守られてきました。
日本と海外は麹の種類に違いがあります。少し専門的になりますが、日本の麹は「バラ麹」、中国の麹は「餅麹」です。菌も日本は主としてアスペルギルス属のコウジカビ、中国ではリゾープス属のクモノスカビと、ムコール属のケカビが使われます。私はバラ麹は日本人の発明と信じ、酒・味噌は中国から渡ったものでなく、日本独自で考案されたものと考えています。
加熱した麦、米、大豆などの穀物にカビを繁殖させて作る。
穀物を粉砕し、水で練って固めた後、カビを繁殖させる。
私は1955年頃、理化学研究所におり、隣りの部屋では究極の旨味成分の構造式を研究していました。その結果、下の図のようになりました。
左の旨味成分の構造式は、研究所で明らかになった旨味の構造式で、上が鰹節の旨味のイノシン酸、下が椎茸の旨味のグアニル酸です。右は生物のもつDNAの構造4つの塩基を示しています。上段の2つ、アデニンとグアニンは左図のイノシン酸、グアニル酸に似ていることにお気づきでしょう。
私はこれを見て、究極の旨さは生命に通じていたと感じて興奮しました。
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この究極の旨味は酵母菌の成分や麹菌の酵素の研究から生産方法がわかってきました。旨味成分は麹菌の酵素が作ったものが多いようです。こう考えるとお料理を美味しくする為に塩麹を使う今のブームも理解できるような気がします。
家庭の主婦の多くはお料理を作る時に「味の素」の白い粉をかけることに拒否反応を示し始めました。
美味しい料理を作るときは、いつかは麹菌や酵母菌、乳酸菌を振りかける時代が来ることが想像されます。これからは生きた麹を利用するように、微生物が生産する酵素を利用する時が来るかもしれません。